弊社所蔵の「来国光」が公益財団法人日本美術刀剣保存協会発行の「刀剣美術 六月号 」に掲載されましたので、以下に掲載致します。
短刀 銘 来国光
長さ九寸二分半 反りなし 平造 三ツ棟
(地)小板目肌つみ、処々肌立ちごころの板目交え、地沸微塵に厚くつき、地景細かによく入り、淡く沸映り風立つ。
(刃)小のたれに互の目交じり、足・葉入り、匂口やや深く、小沸厚くつき、金筋・砂流しよくかかり、沸筋入り、匂口明るい。
(帽子)少しく乱れ込み、細かに掃きかけ、先小丸に返る。
(彫物)表裏に刀樋を掻き流す。
(講評)この短刀は、やや寸延びで身幅が広めとなり、加えて重ねがやや薄めであることから、延文・貞治型の姿形と見立てた入札があった。しかしながら、反りが全くついていないことから、時代は鎌倉後期を主体に想定したいものであった。
本作は、つんだ小板目肌に地沸が微塵に厚くついた美麗な鍛えであるが、処々肌立ちごころの弱い肌合いが交じる「来肌」と言われる特色が表出し、刃文はのたれに互の目が交じり、足・葉が入り、匂口は深めとなり小沸が厚くついて明るく柔らかな印象を与え、金筋・沸筋・砂流しなどもよく働き、帽子は小さく乱れ込み、細かに掃きかけて小丸に返るなど、穏やかな乱れの品位ある来国光らしい作である。
同然の来国次の見方も少なくはなかったが、同工ならば国光に比べてやや肌立ちが強いものがまま見られ、焼きは高く、地刃共に沸が強く、地景が目立ち、刃中の働きも一段と豊富となるなど相州伝的色彩を強く帯びるものが多い。
またややズングリとした印象を持たれたのか粟田口国吉の札があったが、国吉にはここまで乱れた作品はあまり見られず、直刃に二重刃が長くかかるものが多く、鍛えも極くつんでより精美な小板目肌となる。
(刀剣美術より。)