脇差 銘 於南紀重国造之

  • 刀剣美術

弊社所蔵の「於南紀重国造之」が公益財団法人日本美術刀剣保存協会発行の「刀剣美術 三月号 」に掲載されましたので、以下に掲載致します。

脇差 銘 於南紀重国造之

長さ一尺二寸六分 反り三分強 鵜首造 庵棟

(地)板目に杢交り、流れ肌・大杢目を交え、やや肌立ち、地沸厚くつき、地景太く入る。
(刃)広直刃基調、先に行くに従って焼幅を広め、足・葉よく入り、匂口深く、沸厚くつき、処々湯走り・飛焼を見せ、沸筋・金筋・砂流しかかり、匂口明るく冴える。
(帽子)乱れ込み、さかんに掃きかけ、焼崩れを見せ、先焼詰め風。
(講評)本作は、寸が延びて身幅広く、先反りが目立つ姿ではあるが、室町時代の平脇差に比べて重ねが厚く豪壮であることから、慶長新刀が第一に考えられる。

鍛えは肌立った板目に流れた肌合を交え、大きな杢目が流れ肌に沿うようにやや形が潰れて交じり、地景も目立っている。刃文は、匂口が深くよく沸づき、切先へ向かうに従って焼幅を広げ、互の目や丁子風の刃が連れて漸次増えてゆき、刃中刃境の働きもさかんとなり、部分的に渦巻くような金筋が入り(本作では物打辺に淡く入る)、加えて起伏ある乱出来の際に時折見せる箱刃風も交じり、帽子はそのまま強く乱れ込んでしきりに掃きかけ、先焼詰め風となって表裏の形が多分に異なった、迫力ある明るく冴えた出来口である。

江義弘を理想に置き、家伝の大和伝と往時大流行していた相州伝との優れた点を融合させることに成功した南紀重国の見どころが随所に現れた作であり、作風を熟知していた方は難なく当たりを取られていた。なかには、同工の脇差には平造と三ツ棟の組み合わせが多いことから、鵜首造に庵棟の本作に違和感を覚え、他工に走られた方もいたが、総体の出来を見れば少々勇み足だったといえようか。

国路や康継の札もあったが、両者とも帽子が尖り、国路は乱れが大きく起伏が目立ち、また逆がかるところがあり、康継ならば、匂口は沈みごころであり、杢があっても大杢目は目立たず、黒みの強い北国がねになる。

(刀剣美術より。)

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